01.束の間の休息-1
レイジの墓参りの帰り道。エスタの気持ちはひどく沈んでいた。 レイジが亡くなったと知ってから二週間経ち、ようやく彼の死と向き合おうと思った。それから彼の墓を前に自身が衛兵になったこと、ルイと再会した経緯を報告した、その帰り道を重い足取りで歩…
02.束の間の休息-2
「というわけで許可は何とか取れました!一緒に慰安旅行に行きませんか!」「エスタさん。失礼かもしれないですけど順番がおかしくないですか。普通こっちに聞いてから許可取るってものじゃ……」 さながら一世一代の告白みたいに頭を下げてお願いしたが、弟…
03.束の間の休息-3
空が橙色に染まる頃にようやく宿泊施設に到着し、エスタたち一行は早速そこの目玉とも言える屋外の入浴施設――温泉に足を運んだ。 実際、王宮にも大浴場があるので複数人で入浴することに慣れていないわけではない。そのはずなのに、弟くんは何故か「自分…
04.束の間の休息-4
温泉でのてんやわんやもなんとか一段落して夕食も終えた。その間も心配そうに様子をうかがうティジ君に、弟くんは真っ赤な顔を手で覆い隠しながら「ごめんなさい……」と謝り続けていた。 弟くんが謝ることは無いはずなのにすごく申し訳なさそうにしている…
05.束の間の休息-5
「おっはよう!朝ですよー!」 明るい声と共に布団を引き剥がされたルイは微睡んでいた意識を強制的に覚醒させられる。 先ほどまであった温かさがなくなり少し肌寒い。腕の中に別の温かみを感じてそれに縋るように抱き寄せると肩を叩かれた。「弟くん。ティ…
06.束の間の休息-6
「意外だな。結構ちゃんと書けてる」 向かいに座るクルベスさんが衛兵に就いて三年目(提出した始末書は数知れず)の俺ことエスタ・ヴィアンの書き上げた報告書を見て、感心したように呟く。 あれから何事も無く城に戻って「じゃあこのまま書いてしまうか」…
07.融氷-1
いつもと同じように家族と過ごす休日。セヴァは2歳上の兄であるクルベスと他愛もない話をしたり、子どもと遊んだりするいつもと変わらない休日を過ごしていた。 ルイももう2歳だ。今年で9歳になる上の子――レイジは最初はおっかなびっくりという様子だ…
08.融氷-2
クルベスは自身の可愛い弟――セヴァからの相談を受けて、レイジと買い物に出かけた。 普通に誘っても絶対についてきてくれないので「ルイの誕生日プレゼントを一緒に選んでくれないか」と言うと少し渋った様子を見せたものの了承してくれた。やっぱりルイ…
09.融氷-3
なんとか涙を引っ込めたレイジの体を抱き寄せる。その体は非常に冷えていたがレイジは凍える様子もなく、静かに体を預けていた。こちらとしては『風邪を引いてしまうんじゃないか』と心配で落ち着かない。「いったん家に帰って話すか?」「……ここで話す」…