chapter.3

07.喧騒-7

 食堂にて夕食を終えたエスタはクルベスの私室へと足を運ぶ。勤務時間はとうに終わっているため、完全に私用で出向いていた。 自分の寝床で過ごすよりも彼の元でのんべんだらりと駄弁るほうが好きなのだ。迂闊に彼の弟家族ないしはルイの昔話を聞こうものな…

06.喧騒-6

「弟くん、ちょっと落ち着こう。ほら、価値観が違う人って世の中たくさんいるから。ちょ、弟くん速いって!え、競歩の練習?もしかして運動系のサークルから誘われてるのかなぁ!?」 今日も今日とて怒り猛る心情を如実に表した歩調のルイ。そんな彼をエスタ…

05.喧騒-5

 新学期が始まり、最初に行われる学力試験。ルイはその結果――もとい採点された答案と、隣に座るティジの答案を見比べる。 自身も一応平均点以上の点数は取れているがティジと比べるとやはり霞んでしまう。おそらく学年首位にあたるであろう優秀な結果に舌…

04.喧騒-4

 その夜、夕食を終えたティジはジャルアの私室に訪れていた。「どうだ。学校はもう慣れたか」「うん、もうだいぶ慣れたよ。でもルイに『絶対一人で行動するな』って言われちゃうかな」 ジャルアの問いかけにティジは少し困ったように笑う。 だがしかしルイ…

03.喧騒-3

「二人ともおかえり。学校はどうだった?」 正門前。懐古に浸りながら待っていたエスタは早足で歩いてきたルイたちに声をかける。「別に。いつも通りですけど」 ルイは自身の発言とは裏腹に刺々しい口調で返す。何かあったことは明白だ。その証拠にティジも…

02.喧騒-2

「ルイ、ちょっと待って……!」 ティジは自分の手を引き、ズンズンと先を進む背に呼び掛ける。機嫌が悪いのは火を見るより明らかだ。ここまで不機嫌になっているルイは初めて見た。「俺は平気だから。別に変なこと聞かれたりしてないし……」『自身の出自に…

01.喧騒-1

 授業を終えた後も喧騒の絶えない教室。その一角でティジは一人、物思いに更けていた。 復学して一ヶ月と少しが経ったが周りの目はやはりさほど変わらない。思い返すと初等部に通っていた頃もそうだった。この嫌でも目立つ容姿は人目を引いてしまう。 割り…

chapter.3 登場人物

◆サクラ・ミア・レリリアン(サクラ) ティジの双子の妹。 普段は他所の国のお淑やかな感じの学校に通っている(寮生活を満喫中) 母親似の柔らかな笑みと気品を帯びた雰囲気。そのたおやかな立ち振舞いに初対面の者は彼女に親しみと淑やかさを覚えるだろ…