chapter.3

19.夕暮れ時-2

 互いに誤解していただけだと知り、ホッとしたのも束の間。ティジとルイは『そういえば後片付けの途中だった』と気づく。「急いで戻らないと。多分なかなか戻らないって思われてる」 人目もないのでルイは躊躇することなくティジの手を取り、慌ただしい足取…

18.夕暮れ時-1

 学園祭も無事終了し、クルベスたちとはまた帰りに待ち合わせをして一旦別れたティジとルイ。来場者もいなくなった学舎では在校生が時折ふざけたりしながら後片付けを進めていく。 使用した教室の清掃、食器や調理器具など借りていた備品の数量に変化はない…

17.学び舎の催事-5

「あの二人、大丈夫かな……」 迷路の外でティジとエスタを待つルイは心配そうにひとりごちる。ティジの迷子癖にほとほと困らされているルイとしては不安でしかない。気を紛らわせようとエスタが買ってくれたクマのキーホルダーを握る。 そんなルイの頭を無…

16.学び舎の催事-4

 午後の手伝いも終わり、再度合流したティジたち。各所の模擬店では『完売』の文言が見受けられ、学園祭も徐々に終わりが近づいていることを実感させられる。 廊下を適当に歩きながら「次はどこ行く?」や「講堂で行われている演奏を見に行ってみるか」など…

15.学び舎の催事-3

 エスタとクルベスは厨房の手伝いへと向かったティジたちを送り出し、その足でティジたちが所属する学級の企画――喫茶店に入る。昼時を過ぎたためか客足も落ち着いており、待ち時間を要することなく入店できた。 昼食はティジたちと学園内を巡った際に色々…

14.学び舎の催事-2

「ルイ、えっと……」 学園祭が始まり、慌ただしい午前が終わって休憩に入ったティジは恐る恐る声を掛けた。 予備のテーブルを持って戻った時には当然ながらルイもすでにボタンの糸処理は終わっていた。シンと共に戻って来たのを目にしたルイは問い詰めはし…

13.学び舎の催事-1

 サクラに暫しの別れを告げ、着々と学園祭の準備を進めていく。準備期間中、ティジが勝手に行動して迷子になってしまわないようルイは片時も側を離れなかった(流石に用を足す時は中まで同行することは無かったものの、無事に戻ってくるかひどく心配した様子…

12.多事多端-4

 頃合いを見て医務室に顔を出したエスタ。そこではいたく反省した様子のティジと刺々しい空気をまとったクルベス、状況説明のために同行していたルイがいた。 倒れた際に怪我を負っていないか念入りに確認されるティジ。袖を捲り、腕の内側まで目を通すクル…

11.多事多端-3

 車中。大層ご立腹のルイはクルベスの運転に揺られながら後部座席でしかめっ面を見せていた。 体調不良となったためご家族へ連絡、となるとティジたちの場合はクルベスへと連絡がいく。年齢差の観点から考えて不自然ではないことに加え、常日頃から二人の面…

10.多事多端-2

 放課後。夕暮れ時の廊下を歩くティジ。その足取りは速く、焦りを感じられた。 本日の授業も終わり、開催が近づいてきた学園祭の準備をおこなっていたところ『あの面倒見の良い教師にお礼を言わねば』と思い立った。 その姿を目で探すとちょうどブレナ教師…

09.多事多端-1

「――ィジ、ティジ」「え?……あ、どうしたのルイ」 昼時の教室。ティジは肩を叩かれ、ようやくルイに呼ばれていることに気付いた。「昼食、今日はどこで食べる……体調悪いなら早退するか?」「いや、どこも悪くないよ。ちょっとボーッとしちゃっただけ」…

08.泥濘の夢

 夜半。先刻まで賑やかだった国王の寝室は静寂に包まれていた。ベッドの中、毛布にくるまりながらジャルアは子どもたちとの幸福な時間を振り返っていた。 ようやく気兼ねなく子どもたちと会うことができ、家族の思い出を語らっていた。これ以上にないほどの…