33.継ぎ合わせのページ-11
「ぅ……っ」 目を開ける。すると目の前には真っ白な景色が広がっていた。自分以外なにもない、遠近感すらも失ってしまいそうになるほどの白。その中心に自分は横になっていた。 この状況は三度目だ。それが指し示すことはひとつ。 ――あの夢だ。またここ…
chapter.5
32.継ぎ合わせのページ-10
時刻はもうじき日付が切り替わる夜半前。日中の賑やかさとは様相を変えて閑散とした王宮の通路を歩きゆく影がひとつ。その影――ジャルア・リズ・レリリアンの表情は硬く、またその足取りにも焦りが滲み出ていた。 日頃の彼の姿を知る者が見ればその並々な…
chapter.5
31.継ぎ合わせのページ-9
あらゆる生き物が寝静まる夜闇に包まれた部屋の中。寝支度を整え、ベッドの上に座ったティジの表情はひどく沈んでいた。 結局、夕食の席ではサクラは顔を見せなかった。クルベスさんやエスタさんに聞いても、少し部屋で休みたいのだそうだ、という事しか教…
chapter.5
30.継ぎ合わせのページ-8
「……大丈夫?」 サクラは心配そうにそして若干の同情の目でこちらを窺う。それに俺はつい一時間ほど前――父さんとの話し合いの際に強かにぶつけた後頭部を労りながら頷いた。「うん、大丈夫。ちょっとコブにはなってるけどクルベスさんにもちゃんと診ても…
chapter.5
29.継ぎ合わせのページ-7
「それじゃあティジ君、終わったら迎えに行くから連絡してね。ジャルアさんとのお話、楽しんでくるんだよ」 エスタさんに俺はコクリと頷く。でも自分が目を覚ましてから――記憶を失った状態で目覚めた日以降、父さんとはろくに言葉を交わせていない。そんな…
chapter.5
28.継ぎ合わせのページ-6
ティジが『皆のことをもっと知るために話し合いたい』という提案をしてから数日が経った、ある日の昼下がり。 もうすっかり日課となっているエスタらとの電話を終えたルイは、少し早めに教室に戻ってきていた。昼休みはまだ終わっていないのだが、だからと…
chapter.5
27.継ぎ合わせのページ-5
クルベスがルイを迎えに行った後。しばらくしてクルベスから「もうすぐ帰る」という旨の連絡を受けたエスタは「折角だから弟くんたちを出迎えちゃおっか」とティジに提案する。その提案に二つ返事で頷いたティジはエスタに連れられて王宮内の通路を歩いてい…
chapter.5
26.継ぎ合わせのページ-4
ティジたちが通う学園の正門前。本日の授業も終わり、友人と談笑しながら歩く者や、何か予定でもあるのか急ぎ足で家路につく学生たちであふれかえっている中。彼らの往来を邪魔してしまわないようにと、少し外れた場所にクルベス・ミリエ・ライアは佇んでい…
chapter.5
25.継ぎ合わせのページ-3
医務室の中、カチコチと秒針が時を刻む音が響く。部屋の中心でティジはクルベスに様々な質問をし、そしてその返答を「ふむふむ」とノートに書き込んでいた。「それじゃあクルベスさんと父さんは従兄弟で俺とルイはー……はとこ?」「あぁ、こう言っちゃ何だ…
chapter.5
24.継ぎ合わせのページ-2
ルイの送迎を終えて城に帰還したクルベス。自分の仕事場でもある医務室の扉を開けるとエスタとティジが「おかえりなさい」と出迎えられた。「ただいま。悪い、もしかして待たせたか」「いえいえ、今さっきティジ君からのインタビューが終わったところなんで…
chapter.5
23.継ぎ合わせのページ-1
あれから数日掛けて城の探索を終えた。結局この数日の間で記憶は戻らず、あの声の主を見つけ出すことも出来なかった。 それともう一つ。あれ以降、あの不思議な夢を見なくなった。 だからといって何も行動せずにいても状況が変わる事はないので、あの声が…
chapter.5
22.淡彩色の記録-8
小さく息を吐き、いつの間にか閉じてしまっていた目を開ける。 何度かまばたきを繰り返し、周囲の不可思議な光景――真っ白な景色を確認してようやく自分の状況を理解する。 ここはおそらく夢の中だ。あの不思議な夢の続き。それを証明する物はどこにも無…
chapter.5