17.淡彩色の記録-3
ルイの学校の件について、日中はクルベスさんも忙しそうにしていたためもう少し落ち着いてから聞いて見ることになった。 落ち着いてからっていつ頃だろう?そういえば記憶を失くす前の俺はクルベスさんとどれぐらい親しかったのかな。 実際のところ、あの…
chapter.5
16.淡彩色の記録-2
結局、自分が記憶喪失だと知ったその日の夜はそのまま医務室で眠ることとなった。クルベスさんから「こんな状態で一人にさせるのは心配だから」と言われたからだ。 それに加えて「しばらくの間は一人で行動せずに必ず誰かと一緒にいるように」と言いつけら…
chapter.5
15.淡彩色の記録-1
目を覚ましたら知らない場所だった。でも知らない場所に連れて来られたのではなく、自分が記憶喪失になっているのだと知ったのはそれからすぐの事。それを教えてくれた眼鏡を掛けた男性は自分にいくつか質問をすると慌ただしく部屋から出ていってしまった。…
chapter.5
14.境目-9
ルイはベッドに横たわるティジを見つめる。雷が鳴る日のように呻くこともなく、まるで死んでいるかのように眠るその人。毛布が微かに上下していることから呼吸をしているのは確かだが、それ以外の反応が見られないことにひどく心がざわめいた。 ティジはい…
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13.境目-8
「まぁ大体何があったかは分かった。それにしても……まさかそっちも同じ物を持ってたとは」 クルベスから連絡を受け、城に駆けつけたエディ。クルベスの私室で落ち合った彼はクルベスから事の経緯を聞くとため息まじりに呟いた。その口振りから察するに、リ…
chapter.5
12.境目-7
昼下がり。学園内のとある一角――もうすっかり馴染みの場所となった休憩スペース。そのベンチに座っているルイはボーッと手元を見つめていた。視線の先には城の料理長から貰った本日の昼食。 昼休みが始まってからもう三十分ほど経過している。だが食欲が…
chapter.5
11.境目-6
そこは自分以外誰もいない空間。 どこまでも続く広いその真っ白な空間には、至るところに箱やボロ切れのような袋が打ち捨てられていて。箱はひび割れ、袋は縫い目から引き裂かれており、その中から『黒い泥のような物』があふれ出していた。 …
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10.境目-5
「俺はティジの様子を見に戻ろうかと思ってる。ルイ、お前はどうする?」 話が終わった後もしばし放心していたルイの耳にクルベスの声が入る。その声にルイはうまく働かない頭を無理やり起こした。「あ……俺は……おれ……は……」 一緒に行く、という言葉…
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09.境目-4
クルベスに連れ出されたルイ。すぐ近くのクルベスの私室で話をするのかと思っていたが、何故か元来た道を戻らされる。 その道中、息を切らしたエスタと鉢合わせた。「なんか、ティジ君が運ばれたって……何かあったんですか……?」 エスタの口振りから推…
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08.境目-3
今日も今日とて学校を終えて城に帰宅したルイとエスタは帰ってきたことを報告するため、クルベスの元へと向かっていた。 その道すがら、どこかへ向かう途中だったのかトレイを持ったクルベスと偶然出会う。トレイには水差しとコップ、それと錠剤のシートが…
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07.境目-2
先日から体調を崩していたティジ。ここ数日は学校を休んでしまっていた彼だが、今ではすっかり熱も下がり、さらに言えば昼頃にはクルベスからも「今日一日だけ様子を見て、問題無ければ学校に復帰できるな」とお墨付きをいただいた。 クルベスの言葉に思わ…
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06.境目-1
医務室の中。ソファに浅く座っているエスタの手にはつい先ほど通話を終えた携帯電話が握られている。先ほどから何度もため息を吐いている彼はまばたきの回数も平常時よりも格段に多く『いま自分は落ち着きがありません』と全身で表現していた。 ここ数日の…
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