chapter.5

09.境目-4

 クルベスに連れ出されたルイ。すぐ近くのクルベスの私室で話をするのかと思っていたが、何故か元来た道を戻らされる。 その道中、息を切らしたエスタと鉢合わせた。「なんか、ティジ君が運ばれたって……何かあったんですか……?」 エスタの口振りから推…

08.境目-3

 今日も今日とて学校を終えて城に帰宅したルイとエスタは帰ってきたことを報告するため、クルベスの元へと向かっていた。 その道すがら、どこかへ向かう途中だったのかトレイを持ったクルベスと偶然出会う。トレイには水差しとコップ、それと錠剤のシートが…

07.境目-2

 先日から体調を崩していたティジ。ここ数日は学校を休んでしまっていた彼だが、今ではすっかり熱も下がり、さらに言えば昼頃にはクルベスからも「今日一日だけ様子を見て、問題無ければ学校に復帰できるな」とお墨付きをいただいた。 クルベスの言葉に思わ…

06.境目-1

 医務室の中。ソファに浅く座っているエスタの手にはつい先ほど通話を終えた携帯電話が握られている。先ほどから何度もため息を吐いている彼はまばたきの回数も平常時よりも格段に多く『いま自分は落ち着きがありません』と全身で表現していた。 ここ数日の…

05.木の芽時-5

 長い長い一日が終わり、誰かに呼び止められる前に足早に教室から出るルイ。背後や周囲に警戒しながらエスタが待つ正門前へと急ぐ。 下校中の生徒が歩いている正門前、さほど苦労する事なく探し人を見つけることが出来た。その探し人――エスタは硬い表情で…

04.木の芽時-4

 昼時。教室を足早に抜け出したルイはある場所へと向かった。目指す先は校舎から出て少々歩いたところ、少し開けたスペースにベンチがあるだけの学園内でも穴場の休憩所だ。 昼食は普段と同じように昼食を持たされているので脇道に逸れることなく足を進めて…

03.木の芽時-3

 ティジが体調不良を訴えた翌朝。学校の正門前ではエスタがルイの手を取ってしきりに言葉を掛けていた。「本当に大丈夫?やっぱり俺もついて行こうか?俺ここの卒業生だから中には入れるし、そのほうが絶対安全だよ……」「そこまでしてもらわなくても大丈夫…

02.木の芽時-2

「いやー、まさか本当に応じてくれるとは思わなかったよ」 学校内の食堂。その一角にあるテーブル席でシンはにこやかに言う。それに対してルイは眉間にシワを寄せ、不快感をあらわにした。「元はと言えばお前がしつこく誘ってきたんだろうが」「冷たいなぁ。…

01.木の芽時-1

 四月。うららかな春の陽気に当てられて自然と気分も明るくなる季節。年度も変わり、ティジとルイも学年が一つ上がり二年生となった心機一転の春。 そんな雰囲気とは裏腹にルイは王宮の通路を怒り心頭で闊歩していた。「あいつ、今日も懲りずにしつこく誘っ…