17.陽だまりと雨-1
一ヶ月ほど前、ティジがルイの目の前で倒れた日のこと。 ルイたちが出ていってしまった後の医務室で僕と二人きりになったクーさんは胃薬を飲むとこちらに向き直った。「さーて、ティジ?少ーしだけお話しよっか」 わぁ、すごいなぁ。笑顔でも人を畏縮させ…
chapter.2
16.新たな居場所-6
夜も更け、暗くなった廊下を歩く小さな影。窓から吹き抜けるそよ風がティジの白い髪をなびかせた。 この時期になるともう少し南のほうの地域では袖の短い服で過ごさなければならないほど暑くなるところもあるらしいがティジたちが過ごす地域ではそこまで暑…
chapter.2
15.新たな居場所-5
気を失ってぐったりと体を預けるティジを医務室に担ぎ込む。一応の処置(というかベッドに寝かせることしかできないが)を終わらせ、ルイに「あとはティジが目を覚ますのを待つだけだよ」と告げる。 魔力のバランスが著しく崩れた際は点滴などを打って正常…
chapter.2
14.新たな居場所-4
涙で濡れた顔を拭いた後、ティジに連れてこられたのは沢山の花が咲いている場所だった。「到着っ!ここが僕の一番のお気に入りの場所、中庭の庭園だよ」「わぁ……」 きれい、と思わず声を漏らす。色とりどりの花が目の前に広がる、すごく綺麗な場所だ。吹…
chapter.2
13.新たな居場所-3
どれぐらい泣いたか覚えていないけど、気がついたら朝になっていた。いつの間にか眠ってしまっていたようだ。 病院にいた時は『もしかしたら伯父さんもいなくなっているんじゃないか』と怯えながら目を開けていたけど、今は目を開けるより先に伯父さんの体…
chapter.2
12.新たな居場所-2
――その日の夜。「ルイ、熱くないか」「うん、大丈夫」 伯父さんへの返事をするとその声は浴室の壁に反響した。先に体を洗ってもらったぼくは丁度いい温度のお湯で満たされた浴槽に入っていた。体も一人で洗えると言ったが「体の調子も見ておきたいから」…
chapter.2
11.新たな居場所-1
「ルイ、来週ここを出るぞ。お医者さんからも許可がおりた」 その日どこかに出掛けていた伯父さんは帰ってくるなり、そう言った。「お前、よく許可おりたな」 伯父さんのお友達で警備隊のエディさんが驚いた顔で伯父さんを見てる。「あぁ、こっちが言う前に…
chapter.2
10.とある事件の記録-3
あのクマのぬいぐるみを渡した日から毎日、少しの間だけでもエディはルイの元へと足しげく通った。クルベスの友人ということと、クマのぬいぐるみを持ってきてくれた人ということもあってルイは比較的順調に警戒心を解いていった。 それまでは物言わぬ人形…
chapter.2
09.とある事件の記録-2
病室のベッドの上。まぶたを閉じたルイが横たわっている。その細い腕にはそぐわない無骨なギプスがつけられていた。 あれから3日。右腕にひどい裂傷を負ったルイは幸いにも一命はとりとめたが、いまだ目を覚まさない。 事情聴取はもう終えた。自分でも何…
chapter.2
08.とある事件の記録-1
平日は医師業務の傍ら、良き友人でもある国王の息子、好奇心旺盛な王子さまの世話を見る。休日は弟家族のところへ出向き、とりとめのない話をしたり素直じゃないだけの甥と笑顔が絶えない可愛らしい甥たちと一緒に過ごす。 多忙だけど、そんななんでもない…
chapter.2
07.白雪の朋友-5
あれからすぐ国家警備隊が駆けつけてきたので、場所を移動して事の経緯と逃げた連中の特徴を話す。危うく連れていかれそうになった本人は淡々と説明をしているが、その頬に貼られたガーゼは見ているこちらまで痛くなってしまいそうだった。「レイジ!!」 …
chapter.2
06.白雪の朋友-4
あのお呼ばれの日以来、俺とレイジはことあるごとに学校で一緒に過ごすこととなった。どうやら親や伯父、何よりルイが学校でのことを聞いてくるらしい。適当に作り話でもすればいいのに、と言うと『ルイに嘘はつきたくない』と返してきた。相も変わらずのブ…
chapter.2