29.光降り注ぐ窓辺
国王の執務室。そこでジャルアは6歳の我が子――ティジの話を聞いていた。 ティジは執務机を挟んだ先のソファに座り、最近読んだ本について楽しそうに話している。6歳の子どもにはまだ難しい内容のはずだがどうやら先代国王かつジャルアの父サフィオと一…
chapter.2
28.衛兵はかく語りき-9
ある日の昼下がり、ルイは廊下を何とはなしに歩いていた。その日は特に予定のない日で、次の授業の予習を終わらせて息抜きに外の風にあたりにいった。 いつもなら中庭の庭園に赴くのだけどそんな気分にはなれない。確かあそこにも少し座れる場所があったは…
chapter.2
27.衛兵はかく語りき-8
今後のことに比喩表現でもなんでもなく頭を抱えているとエディさんが「あぁそうだ」と何か思い出したように声を漏らす。「まだ言ってなかったな。俺がここに来るのは様子見だよ。経過観察ってやつ」「そのついでにそっちのほうもどうなってんのかーっていう…
chapter.2
26.衛兵はかく語りき-7
その後、昼食を摂りにいった二人と別れて俺も詰所の食堂にて食事にありついた。そこでうっかり……いや、ばったり上官と鉢合わせてしまい、少々お小言を頂いた。どうやらティジ君たちをここに連れてきたことが耳に入ったらしい。……やっぱり怒られるよなぁ…
chapter.2
25.衛兵はかく語りき-6
「主要な場所はだいたい回れましたかね」 そう呟きながら確認するように弟くんは俺の持つ地図を見る。見やすいように弟くんのほうに地図を寄せたら「あ……ありがとうございます」と小さく礼を言われた。 どこかぎこちない様子に『まだ距離感あるなぁ』とひ…
chapter.2
24.衛兵はかく語りき-5
週明け、本格的に城内警備の仕事が始まり意気込んだのも束の間、どうやらまだ異動の手続きが完全に終わっていないらしく『とりあえず場所覚えとけ』とほっぽり出された。そんな適当でいいのか、と物申したかったが冗談抜きで忙しそうだったのでやめておいた…
chapter.2
23.衛兵はかく語りき-4
まぁ案の定、数日経って城内警備の責任者に呼び出しを食らった。 いや、俺が何かしでかしたわけではなく警備にあたって留意しておくことなどの事前説明のためであって、本当に俺は悪くない。でも「何かおかしいと思ったらすぐに言え」とまるで俺が何かやら…
chapter.2
22.衛兵はかく語りき-3
「じゃあ来週からこっち勤務でよろしくな」 クルベスは心なしかホッとした様子で笑う。そういえば異動の手続きとか大丈夫なのだろうか。ましてや王室と距離がめちゃくちゃ近い城内警備って……まぁ向こうから頼んできたんだし、そこらへんは俺が心配しなくて…
chapter.2
21.衛兵はかく語りき-2
早速だがピンチだ。どうやら集合場所を間違えたらしい。 来週から衛兵としての仕事が始まるのでそれに先んじて事前説明が執り行われる、という手筈だった。 だが、先ほども言ったが俺は間違った場所に来てしまったようだ。俺が勤務するのは民間の教育施設…
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20.衛兵はかく語りき-1
それは突然のことだった。15歳の5月。 その日、俺――エスタ・ヴィアンは家族の用事のため泊まりで遠出をしてようやく帰ってきたところだった。遠出といっても一泊二日程度のもので。夕暮れに染まる街の中を歩いていた。 レイジたちは今日、劇を見に行…
chapter.2
19.陽だまりと雨-3
午後の授業が終わり、ルイは勉強道具を自分の部屋に置きに戻っていた。 今はもう自分の部屋で寝るようにしている。無理してではなく、少しずつでも前に進んでいきたいから。でも、あの事件の日を彷彿とさせる夢を見た時は伯父さんを頼ってしまう。……時々…
chapter.2
18.陽だまりと雨-2
ルイと一緒に眠った日。あれから少し経ったけど、ルイもここでの生活にはすっかり慣れたようだ。笑うことはそんなになかったが、衛兵を見ても息を詰まらせて震えだす頻度は減った。 その日、昼食を終えたティジはルイと共に庭園のいつもの場所――白いベン…
chapter.2