16.雪花-15
結局ティルジアくんと再会したのはあの子の祖父――サフィオおじいさんの葬儀の時か。 今更こんなことを思い出したのは久しぶりにあの子と会ったからだろう。 病室の扉をぼんやりと見つめながら、先ほど見送ったあの子のことを考える。 『話を…
chapter.4
15.雪花-14
今日も今日とてクルベスから護身術を教わったり魔術の練習に励む。 それにしてもここ最近ようやくコツでも掴めたのか、魔術の練度が目に見えて向上している。人に見せることが良い方向に働いたのだろうか。 そこでふと今日はティルジアくんの姿を見てい…
chapter.4
14.雪花-13
次の週末。王宮にて魔術の練習に励んでいるといつものようにティルジアくんが見に来た。しかしどこか様子がおかしい。 どうしたのだろう、と内心心配しているとそれに気づいたクルベスが説明してくれた。「いや、この間この子を外に連れていったんだよ。で…
chapter.4
13.雪花-12
あの日以降、魔術の練習に加えて護身術も教わることとなった。視界の端に興味津々な様子で見学しているティルジアが映る。ときおり真似をするかのように手をわちゃわちゃと動かしている様子が微笑ましい。 ところでクルベスの目を盗んで、ティルジアに『自…
chapter.4
12.雪花-11
「あれ、どういうつもりだよ」 隣りに座るクルベスをキッと睨みつけるレイジ。 あの後クルベスから魔術の練習や護身術を教わった。ティルジアはただ見ているだけだったが、それでも非常に楽しそうにしていた。 日が暮れてきたので切りのいいところで終了し…
chapter.4
11.雪花-10
さっきすごい叫び声が聞こえたけど大丈夫かな……。 レイジはかなりキツめのお灸を据えられたエディが少しばかり可哀想に思えたものの、先ほどの不愉快な発言(嫉妬がどうとか。そんなわけないだろ)を許す気はない。 ……なんかムシャクシャするな。とり…
chapter.4
10.雪花-9
それからは休日は城のほうにお邪魔して魔術の練習をする習慣ができた。(念のためお父さんとお母さんに『これからはお城のほうに出向いて魔術の練習をしたい』と言ったら、あっさり了承がもらえた。心配性のお父さんがあそこまで快く了承してくれたのは正直…
chapter.4
09.雪花-8
息を吐く。あの力を使用したことによる疲労感からではなく緊張が解けたからだ。 ホースから出ていた水は見事に凍ったが、昨日クルベスたちの前でおこなった時とは違って異常な疲労感に見舞われない。 強いて言うならこの力を扱うための理論と力に対する意…
chapter.4
08.雪花-7
翌日。クルベスが作った朝食を食べ終わった頃に、あいつが持っている携帯電話に連絡が入った。慌てて用意して昨日と同じ場所――庭園に足を運ぶ。「まずはこれに目を通してほしい。ここに書かれている方法をもとに魔術の練習をおこなっていけば改善が見られ…
chapter.4
07.雪花-6
「ということがあってね。私としてはいくつかの仮説は立てられたのだけど……」 自室に戻ったサフィオは目の前の人物に今回の騒動を話す。サフィオは一つ息を吐くと相手の目を見据えた。「とりあえず一つ聞くね。ねぇリヴ。きみ、あの子に会ったでしょ」 そ…
chapter.4
06.雪花-5
「レイジ!いたら返事をしてくれ!レイジ!!」 何度も甥の名前を叫ぶクルベス。レイジが行方をくらましてからおおよそ一時間が経とうとしている。それでもこのやたらと広い王宮はまだまだ捜索しきれない。 先ほど負った頬の傷が痛みを訴えるがそんなことは…
chapter.4
05.雪花-4
「うん、なるほど。よく分かった」 青年はそう頷いてレイジの手から氷を受け取る。氷はひどく形を歪めて、ポタポタと水滴を落とす。先ほどクルベスたちの前でおこなった時と比べると幾分かマシだが、それでも尋常じゃない疲労感に襲われた。「周辺の空気の流…
chapter.4