chapter.4.5

  • 01.フリージア-1

    「レイジ、今から出かけるから準備して」 暦は二月。まだ起きたばかりのため、少々寒さを感じながらリビングに行ったレイジ。起き抜け早々に父――セヴァにそう言われ、レイジは思わず「え」と声をあげた。見ると母も慌ただしく準備をしている。(ルイも一度…

  • 02.フリージア-2

     慌ただしい状況であるため極力、人の出入りは最小限に抑えたいという理由から来客用の部屋で一泊したレイジたち。 翌日の昼頃には質素な作りではあるが葬儀会場のような物は出来上がっていた。「こう言っちゃ何だけど……こんな短い期間でよく準備できたな…

  • 03.フリージア-3

     昨日から家族みんなでお葬式っていうのに行っていた。お父さんもお母さんもなんだか忙しそうで、でも何だろう……いつもとは違う。 伯父さんと会えたのは嬉しかったけれど、何でかみんな元気が無い。お兄ちゃんもいつもと様子が違う。 落ち着かないぼくに…

  • 04.フリージア-4

     城内を奔走するクルベス……とその後を追従するレイジ。『ティジがどこかへ行ってしまった』と判明した後、続けざまに甥っ子のルイも姿を消したのだ。 クルベスたちを待っている間、レイジはティジのことをしきりに心配していたらしく。それを気に掛けたセ…

  • 05.ライラックの追想-1

     息が詰まるような圧迫感のある灰色の壁。『座る』という用途さえ満たせれば良い、とでもいうかのように座り心地の悪い椅子。 もうすっかり見慣れた殺風景な空間『取調室』という室名札が掲げられた部屋の中、薄紫色の髪の人物――ニィス・ヴェントは退屈そ…

  • 06.ライラックの追想-2

     それじゃあどこから話そうか。 僕の幼年時代なんてつまらないことしかなかったよ。僕の父と母は仕事一辺倒な人たちで家ではいつも僕ひとり。しかも困ったことに周囲の大人は父と母を良く思っていなかったんだ。 まぁ僕の実家って個人病院だったんだけど祖…

  • 07.ライラックの追想-3

     そんなこんなで学生らしく有意義とは言い難いような何でもない日々を過ごしていたわけだけだ。そんな折に学生生活においての一大イベントともいえる出来事がやってきた。つい先日もあったね。そう、学園祭。 そこで僕は自分の興味があることについての研究…

  • 08.ライラックの追想-4

    「んー……悪い。お前も仕事中なのに使わせてもらって」 だらりとソファに体を預け、気だるげな声を出すエディ。そんなエディにこの部屋――国王の執務室の主であるジャルアは書類から顔を上げずに口を開いた。「別にどうってことねぇよ。静かにしてるなら支…

  • 09.ライラックの追想-5

     本日の聴取も終わり、いつもと変わらず拘置所に戻されたニィス。しんと静まり返った空間の中、体を横たえて天井を見上げた。 ブレナを何故あのような状態にしたのか、その動機について聞かれた聴取から少しばかり日が経った。だがここ最近は自分が関わった…

  • 10.ライラックの追想-6

     ブレナが作った病人食、もとい薄味のおかゆを口に運ぶ。……まずまずの味だ。まぁ今の僕の体調に合わせた料理としては及第点といったところか。「あまり食欲が無かったら無理して食べなくてもいいから。自分が食べられそうな量だけ食べて」 そう言ったブレ…

  • 11.ライラックの追想-7

     気が付いたら目の前にはブレナが倒れていて。自分の周りには割れた花瓶の破片が散乱していた。 頭部からは出血。意識は無いが息はある。脳震盪を起こしているのだろうか。 どこか他人事のように捉えているが僕は危うくブレナを手に掛けてしまうところだっ…