chapter.2

  • chapter.2 登場人物

    ◆レイジ・ステイ・カリア(レイジ)【年齢】白雪の朋友:13歳第一章:23歳【容姿】少し毛先にクセのある黒の髪に深い青の瞳。自身の容姿の良さを全く分かっていない。それどころかルイが世界で一番綺麗だし可愛いという始末。そのことにクルベスは常日頃…

  • 01.夜更けの内談

     ――墓地を訪れたその日の夜。 ルイは自室のベッドで横になっていた。『ちゃんと生きて、大切な人を守る』 あの場所で決意したんだ。しっかりしないと。そう思い、こちらを案ずるクルベスに『もう大丈夫だから自分の部屋に戻る』と告げて今に至るわけだ。…

  • 02.ティジの一日

     カーテンから射し込む朝日に目をしばたたく。やがて、のそりと起き上がり軽く伸びをして窓の外を見る。 小鳥の鳴き声が聞こえる。今日も見事な快晴だ。その事にホッと一息ついたティジは乱れた頭を整えた。 「おはよ、ルイ」「……はよ」 朝食…

  • 03.白雪の朋友-1

     レイジ・ステイ・カリア。あいつは俺にとってかけがえのない友人だった。 13の春。俺、エスタ・ヴィアンは中等部に入学した。ほどほどに友人もできて充実した日々を送っている中、同級生の間で密かに話題になっている奴がいた。 レイジ・ステイ・カリア…

  • 04.白雪の朋友-2

     ――翌日。「あ」「……」 朝、正門でレイジと鉢合わせる。まぁ同じ学級なので登校時間が被ることは何ら不思議ではない。もしかすると今までも気がついていなかっただけで、そばにいたのかもしれないし。 レイジは俺の顔を見るなり、苦虫を噛み潰したよう…

  • 05.白雪の朋友-3

     ――時刻は午後をまわり、庭にて。 内心ヒヤヒヤした食事を終え、ルイと遊ぶことになった。言っておくが俺が自分から提案したわけではない。それなのにレイジ、お前は何で睨んでくるんだ。綺麗な顔が台無しだぞ。いや、睨んでも綺麗なんだけど。「弟くんは…

  • 06.白雪の朋友-4

     あのお呼ばれの日以来、俺とレイジはことあるごとに学校で一緒に過ごすこととなった。どうやら親や伯父、何よりルイが学校でのことを聞いてくるらしい。適当に作り話でもすればいいのに、と言うと『ルイに嘘はつきたくない』と返してきた。相も変わらずのブ…

  • 07.白雪の朋友-5

     あれからすぐ国家警備隊が駆けつけてきたので、場所を移動して事の経緯と逃げた連中の特徴を話す。危うく連れていかれそうになった本人は淡々と説明をしているが、その頬に貼られたガーゼは見ているこちらまで痛くなってしまいそうだった。「レイジ!!」 …

  • 08.とある事件の記録-1

     平日は医師業務の傍ら、良き友人でもある国王の息子、好奇心旺盛な王子さまの世話を見る。休日は弟家族のところへ出向き、とりとめのない話をしたり素直じゃないだけの甥と笑顔が絶えない可愛らしい甥たちと一緒に過ごす。 多忙だけど、そんななんでもない…

  • 09.とある事件の記録-2

     病室のベッドの上。まぶたを閉じたルイが横たわっている。その細い腕にはそぐわない無骨なギプスがつけられていた。 あれから3日。右腕にひどい裂傷を負ったルイは幸いにも一命はとりとめたが、いまだ目を覚まさない。 事情聴取はもう終えた。自分でも何…

  • 10.とある事件の記録-3

     あのクマのぬいぐるみを渡した日から毎日、少しの間だけでもエディはルイの元へと足しげく通った。クルベスの友人ということと、クマのぬいぐるみを持ってきてくれた人ということもあってルイは比較的順調に警戒心を解いていった。 それまでは物言わぬ人形…

  • 11.新たな居場所-1

    「ルイ、来週ここを出るぞ。お医者さんからも許可がおりた」 その日どこかに出掛けていた伯父さんは帰ってくるなり、そう言った。「お前、よく許可おりたな」 伯父さんのお友達で警備隊のエディさんが驚いた顔で伯父さんを見てる。「あぁ、こっちが言う前に…

  • 12.新たな居場所-2

     ――その日の夜。「ルイ、熱くないか」「うん、大丈夫」 伯父さんへの返事をするとその声は浴室の壁に反響した。先に体を洗ってもらったぼくは丁度いい温度のお湯で満たされた浴槽に入っていた。体も一人で洗えると言ったが「体の調子も見ておきたいから」…

  • 13.新たな居場所-3

     どれぐらい泣いたか覚えていないけど、気がついたら朝になっていた。いつの間にか眠ってしまっていたようだ。 病院にいた時は『もしかしたら伯父さんもいなくなっているんじゃないか』と怯えながら目を開けていたけど、今は目を開けるより先に伯父さんの体…

  • 14.新たな居場所-4

     涙で濡れた顔を拭いた後、ティジに連れてこられたのは沢山の花が咲いている場所だった。「到着っ!ここが僕の一番のお気に入りの場所、中庭の庭園だよ」「わぁ……」 きれい、と思わず声を漏らす。色とりどりの花が目の前に広がる、すごく綺麗な場所だ。吹…

  • 15.新たな居場所-5

     気を失ってぐったりと体を預けるティジを医務室に担ぎ込む。一応の処置(というかベッドに寝かせることしかできないが)を終わらせ、ルイに「あとはティジが目を覚ますのを待つだけだよ」と告げる。 魔力のバランスが著しく崩れた際は点滴などを打って正常…

  • 16.新たな居場所-6

     夜も更け、暗くなった廊下を歩く小さな影。窓から吹き抜けるそよ風がティジの白い髪をなびかせた。 この時期になるともう少し南のほうの地域では袖の短い服で過ごさなければならないほど暑くなるところもあるらしいがティジたちが過ごす地域ではそこまで暑…

  • 17.陽だまりと雨-1

     一ヶ月ほど前、ティジがルイの目の前で倒れた日のこと。 ルイたちが出ていってしまった後の医務室で僕と二人きりになったクーさんは胃薬を飲むとこちらに向き直った。「さーて、ティジ?少ーしだけお話しよっか」 わぁ、すごいなぁ。笑顔でも人を畏縮させ…

  • 18.陽だまりと雨-2

     ルイと一緒に眠った日。あれから少し経ったけど、ルイもここでの生活にはすっかり慣れたようだ。笑うことはそんなになかったが、衛兵を見ても息を詰まらせて震えだす頻度は減った。 その日、昼食を終えたティジはルイと共に庭園のいつもの場所――白いベン…

  • 19.陽だまりと雨-3

     午後の授業が終わり、ルイは勉強道具を自分の部屋に置きに戻っていた。 今はもう自分の部屋で寝るようにしている。無理してではなく、少しずつでも前に進んでいきたいから。でも、あの事件の日を彷彿とさせる夢を見た時は伯父さんを頼ってしまう。……時々…

  • 20.衛兵はかく語りき-1

     それは突然のことだった。15歳の5月。 その日、俺――エスタ・ヴィアンは家族の用事のため泊まりで遠出をしてようやく帰ってきたところだった。遠出といっても一泊二日程度のもので。夕暮れに染まる街の中を歩いていた。 レイジたちは今日、劇を見に行…

  • 21.衛兵はかく語りき-2

     早速だがピンチだ。どうやら集合場所を間違えたらしい。 来週から衛兵としての仕事が始まるのでそれに先んじて事前説明が執り行われる、という手筈だった。 だが、先ほども言ったが俺は間違った場所に来てしまったようだ。俺が勤務するのは民間の教育施設…

  • 22.衛兵はかく語りき-3

    「じゃあ来週からこっち勤務でよろしくな」 クルベスは心なしかホッとした様子で笑う。そういえば異動の手続きとか大丈夫なのだろうか。ましてや王室と距離がめちゃくちゃ近い城内警備って……まぁ向こうから頼んできたんだし、そこらへんは俺が心配しなくて…

  • 23.衛兵はかく語りき-4

     まぁ案の定、数日経って城内警備の責任者に呼び出しを食らった。 いや、俺が何かしでかしたわけではなく警備にあたって留意しておくことなどの事前説明のためであって、本当に俺は悪くない。でも「何かおかしいと思ったらすぐに言え」とまるで俺が何かやら…

  • 24.衛兵はかく語りき-5

     週明け、本格的に城内警備の仕事が始まり意気込んだのも束の間、どうやらまだ異動の手続きが完全に終わっていないらしく『とりあえず場所覚えとけ』とほっぽり出された。そんな適当でいいのか、と物申したかったが冗談抜きで忙しそうだったのでやめておいた…

  • 25.衛兵はかく語りき-6

    「主要な場所はだいたい回れましたかね」 そう呟きながら確認するように弟くんは俺の持つ地図を見る。見やすいように弟くんのほうに地図を寄せたら「あ……ありがとうございます」と小さく礼を言われた。 どこかぎこちない様子に『まだ距離感あるなぁ』とひ…

  • 26.衛兵はかく語りき-7

     その後、昼食を摂りにいった二人と別れて俺も詰所の食堂にて食事にありついた。そこでうっかり……いや、ばったり上官と鉢合わせてしまい、少々お小言を頂いた。どうやらティジ君たちをここに連れてきたことが耳に入ったらしい。……やっぱり怒られるよなぁ…

  • 27.衛兵はかく語りき-8

     今後のことに比喩表現でもなんでもなく頭を抱えているとエディさんが「あぁそうだ」と何か思い出したように声を漏らす。「まだ言ってなかったな。俺がここに来るのは様子見だよ。経過観察ってやつ」「そのついでにそっちのほうもどうなってんのかーっていう…

  • 28.衛兵はかく語りき-9

     ある日の昼下がり、ルイは廊下を何とはなしに歩いていた。その日は特に予定のない日で、次の授業の予習を終わらせて息抜きに外の風にあたりにいった。 いつもなら中庭の庭園に赴くのだけどそんな気分にはなれない。確かあそこにも少し座れる場所があったは…

  • 29.光降り注ぐ窓辺

     国王の執務室。そこでジャルアは6歳の我が子――ティジの話を聞いていた。 ティジは執務机を挟んだ先のソファに座り、最近読んだ本について楽しそうに話している。6歳の子どもにはまだ難しい内容のはずだがどうやら先代国王かつジャルアの父サフィオと一…